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PES作品『明確な意識』 S君

講師からのコメント
源義経の視点で書いた歴史小説です。歴史を自分なりにいろいろな資料を基に勉強し、その上で完全オリジナル小説を執筆しました。ただ教科書で勉強しているだけでは絶対にわからない、義経の心情に深く入り込んでいるところが素晴らしいと思います。

――意識が芽生えた時にはもう周りは騒がしかった。小さいころの記憶はもうあやふやだ。唯一ハッキリ覚えているのは、父が亡くなっていたことを知り、父を殺した平氏を討つ決心を固めた、あの日だけだ。その日以来、奥州で稽古に稽古を重ねた。六年間、ただただ一心不乱に。一時は寺に居たが、それは自分には合わなかった。どう合わなかったかは分からなかったけれど、明確な意識で逃げた。
ある日、「平氏を倒そう」と東で誰かが挙兵することを聞き、その「誰か」が自分の兄だということも知った。
「自分には兄と共通の目的がある」
そう思うと、いてもたってもいられなくなった。僕には少しばかりの郎党しか居ないが、それでも兄に会いに京都、黄瀬川へと向かった。明確な意識で。
 もうどれくらい夜を見たのかわからなくなったとき、黄瀬川が見えた。やっと兄に会える。それだけでも僕の心は喜びでいっぱいだった。初めて見た兄は、こういった。
「一緒に平氏を討とう」
 僕と兄は固く手を握り合った。十月二十一日、二十歳の時だった。
「平氏打倒」という目標に向かって、僕は突き進んだ。あの日の四年後の合戦は、兄と共に戦い、勝利した。そして僕は京都に凱旋した。理由は単純。「勝利を求したい」それだけだった。そこで朝廷に「左衛門少尉検非違使にならないか」と言われた。それが何なのかを知らずとも、「すごいこと」という明確な意識があった。僕の心は「認めてもらった」という喜びで満ち溢れていた。
しかし、それ以来僕の生活は豹変した。「平氏を討つ」という兄との約束は変わらなかったが、調停が勝手な任命をしたことに激怒し、反抗的になるようになった。一時は僕を平氏討伐軍から外すことさえあった。それでも僕は戦った。兄との約束、いや、それ以上のものを得るために。そして千百八十五年三月二十四日、僕は兵士に勝利した。兄との約束をはやした。そう思うと、額に大粒の水滴が濡れた。
それでも兄の態度は変わらなかった。
「自分を追討せよ」
と兄は言ったらしく、僕は逃げざるを得なかった。信じたくはなかったが、自分を追討する軍はもうすぐそこまで来ていた。僕はもう兄を兄と思うのをやめた。明確な意識で。
縁故を頼り、僕は平泉まで逃げた。若かりし頃の思い出の地。だが、すぐそこまで兄が率いる軍が追ってきていた。もうなる術はない。いや、諦めたらダメだ。そう思い、兄は兄であることをひたすらに信じ続けた――

今思えば、あの時の想いは無駄なものだったと感じる。静かな山奥。でも、もうすぐここにも喧騒がやってくる。一つの、でも大きな。なぜあの時兄にあったのか。なぜ僕は寺から逃げたのか。なぜ僕は兄を兄と思うことをやめたのに、兄を信じたのか。明確な意識とは何なのか・・・。僕は考えるのをやめる。でも、心に――何か――そう、明確な意識を持って。
――喧騒が聞こえたとき、僕は自分の刃を心に突き刺した。僕には明日がない。本当にそうか。本当にそうなのか。明確な意識が、スッと心の中で消えた。――

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